コラム②: ABAいろいろ

2016年06月10日

一口にABA療育といっても、実際にはさまざまな形態で行われます。例えば、1980年代に画期的な成果を証明したロバース博士の療育では、ディスクリートトライアルトレーニング(DTT: Discrete Trial Training)と呼ばれる方法が使われました。DTTは、一つの課題をスモールステップに分けて、指示(Sd: Discriminative Stimulus)-反応(R: Response)-強化(Sr+: Reinforcing Stimulus)からなる試行(trial)を何度も繰り返して練習するというものです。

DTTとは異なり、自然な環境で行うナチュラル エンバイロメンタル ティーチング(NET: Natural Environmental Teaching)という方法も、数多くの成功例が報告されています。 NETでは、椅子に座って同じ課題を繰り返し練習するという形ではなく、自然な遊びや活動の流れの中で、いろいろなスキルを身につけていくことを目指しています。機軸行動支援法 (PRT: Pivotal Response Training)や要求言語・マンドトレーニングなどで知られているVB (Verbal Behavior) は、自然な形で行うABA療育の代表的なアプローチといえます。

DTTとNETはどちらが良いとか悪いとかではなく、お子さんの発達や学びの傾向などに合わせて、両方をバランス良く組み込むことが効果的だと思います。東京ABA発達支援協会では、お子さんが学んだこと、習得したスキルを、多くの生活の場で活かせるように、タイミングをみてDTTとNETの両方を取り入れた練習を促しています。

DTTとNETのいずれにしても、ABAということで、正確にデータを記録し、それを客観的に分析して、療育の方向性を決定するという点で一致しています。 ABA療育では、セラピストの思いつきや感覚 (思いつきや感覚も時には大事ですが)に頼って、療育の目標や内容を決めるということはしません。 ABA療育とは、いつの時も、データに基づいた科学的な療育を意味しています。[橘川]