コラム③: 誤解しないで、ABA

2016年06月10日

家族3人

2007年に私が帰国した頃から、我が国においても、ABA療育の認知度があがり、発達の遅れや障害のあるお子さんのご家族だけでなく、教育関係者や医療関係者など、興味や関心をもたれる方が増えたという印象を持っています。関連の出版物も随分目にするようになったので、ご自分でABAについて学ばれる方もいらっしゃると思います。とはいえ、まだまだ誤解されていることも多いので、以下に「よくある誤解」についてご説明します。

「ABAって、知的障害がある重度の自閉症にしか効果がないんじゃないの?」

ABA療育は、自閉症スペクトラムと診断されたお子さんの効果的な療育方法として実証されてきましたが、その他の遅れや障害についても数々の成功例が報告されています。
東京ABA発達支援協会では、自閉症スペクトラムをもつお子さんだけではなく、ダウン症や他の染色体異常、脳性麻痺、知的障害、言語発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など、さまざまな障害を抱えたお子さんが通っています。遅れや障害の種類や重さによって、成果の表われ方に違いはありますが、どのお子さんも著しい療育の成果をみせてくれています

「ABAって、小さな子どもにしか効果がないんじゃないの?」

ABA療育は、早期介入の有効なアプローチとして広く知られ、また脳科学の観点からも、脳の発達が目覚ましい時期(3歳頃まで)に始めることが理想的とされています。確かに、できるだけ早い時期に療育を開始することは大切です。しかし、○○歳までに始めなかったら効果がないということでは決してありません。

実際、東京ABA発達支援協会では、小学生になってから、ABA療育を始めたというお子さんも少なくありません。私達人間は、常に学び続けることができる生き物だと思います。ABA療育に「早すぎる」ことがないのと同様に、「遅すぎる」ということもないのです。

「ABAって、週40時間やらなければ効果がないんじゃないの?」

ロバース博士の功績により、自閉症の子どもに対して行った週40時間の療育の有効性が一般に認知されることになりました。しかし近年では、米国学術研究会議 (NCR: National Research Council) も、週25時間でも著しい療育成果があることを認めており、公費で受けることができる療育時間は削減傾向にあります。

ただ公費による療育を受けることができる米国とは事情が異なり、我が国では週25時間でもABA療育の時間を確保するのはかなり難しいことだと言えます。実際のところ、療育の時間が多ければ多いほど、その成果も早く確実に見られますが、東京ABA発達支援協会では、週に2~4時間でも質の安定したABA療育を受けることで、着実な成果を実感していただいています。

「ABAって、子どもを無理やり椅子に座らせて、厳しく訓練するんじゃないの?」

ABA療育と聞くと、長い時間、机に向かって(無理やり)課題をさせるというイメージを持たれることが度々あります。また“スパルタ式”とか“厳しい”といった誤解を受けることも少なくありません。

しかし、ABA療育では、お子さんの興味や意欲を引き出すことをとても大切にしています。例えば、机上の課題ばかりでなく、発達に合わせたいろいろな遊びのアクティビティを通して学べるように工夫しています。また学習の目標も、スモールステップで少しずつ難易度をあげていくことで、お子さんが“褒められる”機会を増やし自信や自尊心を育てています

実際、ABA療育のセッションをご覧になった方々から「楽しそうですね」「こんなにイキイキしているとは思いませんでした」といった感想を度々いただきます。私としては、楽しくなければABA療育じゃないと言っても過言ではないと思います。

「ABAって、マニュアル本があれば誰だってできるんじゃないの?」

確かにABAの基本的な理論や療育の方法は、決して理解しにくいものではありません。しかし、良質の療育を行うためには、単に理論や方法を覚えるだけではなく、理論的な裏付けをもとに、お子さんの発達的ニーズや興味・関心を正確に見極め、効率良く学習を促す技能が必要となります。

療育のプログラムが決まっている場合でも、それぞれのお子さんに合わせて柔軟に内容や方法を微調整するためには、セラピストとしての技量や経験の蓄積が求められます。どのような職業でも同様のことが言えると思いますが、「にわかセラピスト」では質の良い療育は望めないでしょう。経験がない、あるいは浅い人が行う場合は、ABA療育のエキスパートから細かい指導を定期的に受ける必要があります。